ヘルニアとは体内の臓器などが本来あるべき部位から脱出した状態を指し、体腔内の裂隙に迷入したものを内ヘルニア、体腔外に逸脱したものを外ヘルニアと呼びます。椎間板ヘルニアはそのヘルニアの一種で、椎間板の一部が正常の椎間腔を超えて突出した状態のことです。
椎間板の構造
- 中心部にあるゲル状の髄核と周辺部の線維輪、上下の硝子軟骨終盤から成る
- 線維輪における線維の構造は層ごとに交差し、強靭な構造となる
- 引っ張り力、圧縮力、剪断力などが複合した荷重を受ける
- 体重や地面からの衝撃を吸収するクッションの役割を果たす
- 成人の椎間板には血管、神経は存在しない
- 血流が乏しいため、変性性変化を生じやすい
- 椎間板に対する荷重のストレスに加えて回旋力(野球やテニス、ゴルフなどの捻り動作)が作用することにより、線維輪の破綻や髄核の移動・脱出が発生しやすい
腰椎椎間板ヘルニア
≪病態≫
- 第4‐5腰椎間で最も多く発生
- 30~40歳で好発
- 変性あるいは外傷により、線維輪に小さな亀裂や断裂が生じることから発生
- ヘルニアが脊柱管内に飛び出し、神経根や馬尾を圧迫して神経症状が生じる
- 線維輪の変性が見られない10歳代でのヘルニアの発生には、椎間板に対する一時的な外力の作用による線維輪の損傷が考えられる(例えばスポーツでの接触プレーや高所からの転落など)
- 15歳以下の若年スポーツ選手では椎体にある成長軟骨の離開を伴う例が多くみられる
≪分類≫
①椎間板膨隆型
線維輪はまだ完全な破綻には至っていない
②後縦靭帯下突出型
線維輪は破綻しているが、後縦靭帯は温存されている
③経後縦靭帯脱出型
後縦靭帯も突破している
④遊離(分離)型
脱出した髄核が遊離し移動したもの
髄核が飛び出すと炎症反応が起こり、白血球内のマクロファージの働きが活発になります。このマクロファージは異物を食べる働きを持つことから、飛び出した髄核を異物とみなして、食べて吸収してしまうのです。そのため脱出・遊離したヘルニアの方が、自然吸収や縮小が起こりやすいとされています。
≪症状≫
- 腰痛、下肢痛、しびれ感が特徴的な自覚症状
- 体幹前屈時の痛み
- 下肢神経症状(筋力低下、腱反射の低下・消失、知覚低下)
神経圧迫部位 |
筋力低下 |
知覚低下 |
L3-4(L4神経根) |
大腿四頭筋・前脛骨筋 (膝が伸ばしにくい) |
すねの内側 |
L4-5(L5神経根) |
長母趾伸筋 (足首や指が上がらない) |
足の甲 |
L5-S1(S1神経根) |
長短腓骨筋・長母趾屈筋 (足の指が曲げにくい) |
足の外側 足の裏 |
- 膀胱直腸傷害(重度の椎間板ヘルニアが原因で脊髄反射中枢の働きが阻害され、排尿や排便が思うように機能しなくなってしまうこと。1~3%の頻度で発生。)
≪治療方法≫
- 基本は保存的治療
- 発症後3~6か月の間でヘルニアが自然吸収、縮小される
- 腹圧の維持や上昇に寄与する筋力(腹横筋や内外腹斜筋など体幹のインナー)を強化することで、椎間板ヘルニアの発生を抑制する
- 保存療法で症状の軽快がみられない場合、進行する重度の神経症状を有する場合は手術適応となる
- 膀胱直腸傷害を伴う場合は直ちに手術的治療へ変更
頸椎椎間板ヘルニア
≪病態≫
- 第5‐6頚椎間で最も多く発生
- 40~50歳で好発
- 10歳代での発生例は皆無であり、20歳代もまれ
- 腰椎の椎間板変性が20歳代に始まるのに比べ、頸椎は10年遅く、そのため中高年層での発生が多い
- しばしば神経根と脊髄を圧迫して、それぞれ神経根症、脊髄症の症候群を引き起こす
≪症状・治療方法≫
- 頸部痛、上肢痛、手指のしびれ
- 上肢神経症状(筋力低下、腱反射の低下・消失、知覚低下)
- 脊髄症型では手指の巧緻性傷害(手指のもつれ、箸使いやボタンはめが困難など)、痙性歩行(足のひきずり、もつれなど)、下肢や体幹に及ぶしびれ、排尿障害などが出現
- 神経根症であればまず保存的治療を行うのが原則で、脊髄症であればほとんどで手術が適応される
胸椎椎間板ヘルニア
- 発生頻度が100万人に1人と非常にまれ
- 40歳以降の中高年に多い
- 背部痛や胸部痛、下肢の感覚障害が主訴
- 下肢筋力低下や痙性歩行、排尿障害などが出現することもある
- 保存療法が無効な場合が多く、手術的治療が必要
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ATHLETE HOUSE (木曜日, 23 7月 2015 22:06)
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