〈脳震盪とは〉
頭部への直接の衝撃や、頭部に伝わる顔面・頸部その他の全ての部位からの外力により一時的に神経機能が低下した状態をいいます。プレーヤー同士の衝突や転倒して頭部を直接強打したとき以外にも、頭部を急激に揺すられたときに起こる脳組織の「ひずみ」により脳の機能障害をきたし、脳震盪を起こす場合もあります。脳震盪は「意識がなくなる」状態だけではなく、ボーっとしながらプレーを続けたり、試合の前後のことを思い出せないような「健忘」も広く含まれます。つまり意識の消失を伴わないことも多く、健忘の最中でも意識や運動機能は正常なときがあるのです。
〈脳震盪を疑う症状〉
意識の消失がある。
意識の消失がなくても、次のような症状があれば脳震盪を疑います。
記憶がない。つじつまの合わない発言、同じことを繰り返し尋ねる。
混乱している。日付、場所が分からない。
めまいやふらつきがある。動作が鈍い。
嘔吐する。吐気がある。打撲部以外の頭痛、例えば頭全体に及ぶような頭痛が続く。
〈脳震盪を繰り返すと・・・?〉
脳震盪は繰り返されることが多いとされ、一回起こした競技者は、起こしたことがない競技者より6倍起こしやすいとも言われています。次第に弱い衝撃で脳震盪を反復すようになり、さらに回復に時間がかかるようになります。また脳震盪の症状は時間とともに順次消失していきますが、慢性的に繰り返すと永続的な認知機能の障害を起こす可能性があります。選手は少しでも早くプレーに復帰したいという気持ちから、「意識が戻ったら大丈夫」という誤った認識や、症状の無視、脳震盪から完全に回復する前に復帰してしまうケースが多くあります。これらは重大な脳損傷や回復日数の長期化、症状の慢性化につながりかねません。
脳震盪後症候群
脳震盪を受けてから1週間程度続く自覚症状のことをいいます。頭痛、物忘れ、耳鳴り、聴覚障害、めまい、手足の震え、吐き気など様々な症状がみられます。
セカンドインパクト症候群
1度目の脳震盪から短期間(脳が完全に回復していない状態)で2度目の脳震盪を起こしてしまうと、ダメージを受けている脳細胞にさらに強いダメージを与えてしまいます。これをセカンドインパクト症候群といい、この状態になると重症化する確率が50%以上になり、助かったとしても高い確率で障害が残ってしまします。
1. 症状・・・以下の徴候や症状のうちどれかが見られるときには、脳震盪の疑いがある。
n 意識消失 n 痙攣発作、ひきつけ n 健忘症 n 頭痛 n 頭部圧迫感 n 頸部痛 |
n 吐き気や嘔吐 n めまい n ものが霞んで見える n バランスが悪い n 光に過敏 n 音に敏感 |
n すばやく動けない n 霧の中にいる感じ n 気分が良くない n 集中力が出ない n 思い出せない n 疲れている |
n 混乱している n 眠くなりやすい n いつもより感情的 n 怒りやすい n 悲しい n 不安感がある |
2. 記憶力・・・全ての質問に正しく答えられなければ、脳震盪の疑いがある。
“ここはどこ(の競技場)ですか” “今は前半後半どちらですか” “最後に得点したのは誰ですか” “最後の対戦相手は” “最後の試合は勝ちましたか” |
3. バランステスト・・・直列立ち
“利き足を前にして、その踵に反対側の足のつま先をつけて一直線上に立ってください。両足に体重を均等にかけ、手を腰にして、眼を閉じて20秒間じっと立っていてください。もしバランスを崩したら、眼を開けて元の姿勢に戻して、また眼を閉じて続けてください。” |
20秒間でもし6回以上エラー(手が腰から離れる、眼を開ける、つま先とかかとが離れる、歩く、よろめく、転ぶ、5秒以上開始の位置から離れたままになる、など)があったら、脳震盪の症状かもしれません。
脳震盪が疑われる選手は直ちに競技を中断させ、急いで医師や専門家の評価を受けさせるべきであり、一人きりにしたり、自動車の運転をさせたりすべきではありません!
〈頭部衝撃時の注意事項〉
意識消失があれば脳震盪あるいはそれ以上の出来事であることは明らか
受傷した選手をその日一人きりにさせない(特に1人暮らしの選手は関係者が必ず付き添うよう配慮)
症状が続く場合は頭蓋内出血を合併している疑いがあるので病院を受診すること
当日頭痛が増強したり嘔吐吐気、痙攣やひきつけなどが出現したりした際は、直ちに病院を受診させること
安全第一であることを忘れずに、疑わしい場合は医師に相談しましょう!
〈競技への復帰〉
受傷当日は、競技に復帰すべきではない
わずかであっても症状が続くうちは運動をしない、また運動の程度は段階的に増やすこと
そのシーズン2回目以上の受傷では休息期間を長く取り、復帰は慎重にすること
コンタクトプレー再開や競技復帰をする前には、医師によるメディカルチェックを必ず受けましょう!
〈予防対策〉
マウスピースの着用やヘルメット(防具)着用義務の遵守
正しいコンタクト技術の習得や、頸部周囲の筋力強化
最適なコンディション作り(体調不良や脱水による集中力の欠如、過度な緊張や減量などに注意)
様子のおかしい選手がいればすぐに知らせるよう周知し、受傷者の早期発見を行う
チーム責任者は選手の、選手は自分自身の脳震盪歴を把握しておくことが大切
脳震盪の後遺症により選手として、将来社会人としての輝かしい道を閉ざさないために、しっかりとした対応が必要です!!
こちらはIRB (International Rugby Board)が発表している脳震盪のガイドラインです。
参考にして下さい。(日本語)
http://www.rugby-shizuoka.jp/wp-content/uploads/2011/09/28df3168d505e68a0664396d62c38e5a.pdf